東南アジアのユニコーン企業への投資考察

東南アジアのユニコーン企業がここ数年でどんどん上場を果たしています。

業種としては配車アプリやEコマース、フィンテックなどこれから成長することが確実視されている業種が多いですが、世界的な利上げ懸念からこれらの銘柄の株価は低調に推移しています。

研究開発のためには多額の銀行借入が必要となりますが、高金利となれば借入調達が困難となり、各企業の事業進捗が遅れるのではないか

という懸念から、一般的には金利利上げ局面ではハイテク銘柄、スタートアップ銘柄の株価は下落しやすいといわれています。

 

ただし裏を返せば割安評価となっている今こそ投資の仕込み時!? かもしれません。上場を果たした東南アジアのユニコーン企業へのこれからの株式投資戦略を探ってみたいと思います。

1.【GOTO】PT GoTo Gojek Tokopedia Tbk

インドネシアのユニコーン企業の筆頭といえばGOTOでしょう。

2021年5月にオンライン配送を手掛けるゴジェクとEコーマースのトコペディアが合併してできたデカコーン企業です。

 

セグメント 主なサービス

セグメント利益額
2021年12月期 (10億ルピア)

オンデマンド 

・車・バイクの配車
・フードデリバリー

1,579
Eコマース

オンラインショッピングサイト
Tokopediaの運営

1,997
フィンテック

・Eマネー(Gopay)
・公共料金支払代行
・映画等のチケット販売
・保険・金・投資信託等の販売

669

 

主なセグメントを纏めてみました。ここには書ききれないくらい多様でニッチなサービスまで展開しており、これらがアプリ1つ、ワンタッチで実現できる驚異的な利便性が企業価値の源泉です。

肝心の株価ですが、2022年4月に上場したばかりですが公募価格338ルピアを下回る株価が続いています。株価軟調の原因としては、このところの米国ハイテク株の弱気相場や、毎年の赤字額があまりにも巨額であるということでしょう。

ただ、流石に上場後はかなりプロモーションを減らしている印象はあり、そろそろ黒字化を目指した経営戦略にシフトしていくのではないかと思われます。
現在のPBR(株価純資産倍率)は1.3倍程度、国は違えど米国のUBERやLYFTはPBR 5倍以上と比べるとかなり割安感があります。

管理人
管理人
PBR1.0倍水準の170ルピア以下に落ち込む可能性は低そうであると考えると、今から買ってみても十分勝機はありそうです


番外編【ARTO】PT Bank Jago Tbk

こちらはネクストユニコーン企業とも呼ばれているフィンテック企業です。
但し、既にGOTOが21.4%を保有しておりGOTO のフィンテックセグメントの中核企業となっていますので番外編としておきます。

Bank Jagoの強みは、Gopayとの提携によりインドネシア全域から預金をかき集めることが出来る点でしょう。


他の一般銀行より1%~2%高い金利と、毎月お得なプロモを打ち出して顧客を獲得しているようです。各地に支店を出す必要のないデジタル銀行では、一旦アプリ開発が完了すればあとはランニングコストを抑えて運用が可能ですので高収益が見込めます。

インドネシアでフィンテック企業が新たに銀行ライセンスを取得するのは煩雑で手間がかかることから、既に上場済みであった PT Bank Artos Indonesia という小規模銀行を買収し、デジタル銀行の入れ物として利用されてきた歴史から今でも株式コードはARTOとなっています。

Gopayと相性の良いデジタル銀行としてGOTOが目をつけ 2020年に資本提携したことで株価が10倍近く暴騰し、一躍インドネシア株式市場でも注目度が高まっていますが、現在GOTOの株価低迷に引きずられる形で株価が下落中です。

管理人
管理人
GOTO上場前は、ARTO株  ≒GOTO株と考えポートフォリオに入れていた投資家も多かったようですが、既にGOTOが上場を果たした今、あえてARTO株を買うメリットはないかもしれません。


2.【GRAB】Grab Holdings Limited

インドネシアでGojekとライバル関係にあるGrabですが、残念ながらシンガポール企業です。(設立はマレーシア)
インドネシアではGojekもGrabも同じくらいのマーケットシェアですが、Gojekがほぼインドネシアのみをターゲットにビジネスを展開しているのに対して、Grabはシンガポール、タイなど多くの国でマーケットシェアを確保しており世界的にはGrabの方が圧倒的に知名度は高いかと思います。

業績を見てみると、まだまだ最終黒字は見えていません。これはGOTOと同じ傾向ですが、株価も同様に暴落しています。なお、Grabはナスダックに上場を果たしており、株式の売買は可能ですが米ドル建てとなる点に注意が必要です。

2.3ドル付近でかなり太目のサポートラインが引けそうです。

ただ、現在の株価水準はPBR 1.4倍ですので、念のためPBR1.0倍水準である2.0ドル付近まで下がる可能性も念頭に、分散して買い進めるのがよさそうです。

3.【BUKA】Bukalapak.com

インドネシアのEコマースサイトBukalapakを運営している企業です。インドネシアのユニコーン企業として初めて上場したことで話題になりました。


インドネシアのEコマースではTokopedia、Shopeeの2強体制となっており、これから首位を目指すのは難しいと思われますが、インドネシアで一定の存在感を発揮すべくBukalapak、Lazadaが追随している印象です。

ちなみに5番手以下は、消費者の認知度もほとんど無い状態。今後は生き残りすら厳しいかもしれません
セグメント 主なサービス

セグメント利益額
2021年12月期 (10億ルピア)

O2O 

・ネット環境にアクセスできない顧客向けの収納代行

▲313
buka pengadaan

・事業者向け通信販売(B to C)

▲10
マーケットプレース

・オンラインショッピングサイトBukalapakの運営

▲1,357

 

主なセグメントは上記の通りです。ネット環境にアクセスできない顧客向けの収納代行やB to Cサービスなど他の企業が手掛けていないニッチなサービスを攻めている印象です。

また、インドネシアの財閥CT コープと合弁でデジタル銀行Allo Bank Indonesia Tbk(BBHI) や新鮮野菜等の宅配サービスAlloFreshへ資本参加していたりと積極的にビジネス拡張を試みている印象があります。

インドネシア初のユニコーン企業の新規上場ということで注目を浴びた銘柄でしたが、上場後はとんでもない株価暴落となっています。

各セグメント利益はすべて赤字であり、将来の収益性に不安は残るものの現在のPBR 0.9倍と異常な割安感を感じています。

投資先の大本命にはなりませんが、短期~中期投資で株価反発を狙うのも面白い銘柄だと思います。

4.【BELI】PT Global Digital Niaga Tbk

インドネシア屈指の財閥ジャルムグループが出資しているECサイトも2022年11月に上場が決まりました。

管理人
管理人
市場価値はユニコーン企業の基準となる10億ドルには届きませんでしたがちゃっかり紹介しちゃいます


インドネシアのECサイトとしては5番手であり、正直存在感はありません。特徴としてはジャルムグループの持つBCA銀行と連結したプロモが豊富である程度でしょうか。

ECサイト以外の方航空券・ホテル予約サイトのTicket.com、高級スーパーのランチマーケットの運営も行っています。

公募価格は450ルピア、PBR3.5倍程度に設定されています。類似企業と比べても異常な株価水準です。株式公開後も株価は伸び悩んでおり、ここから急落の可能性も高いかと思いますので私はお勧めしません。

5.【SE】Sea Limited

インドネシアでは大人気のECサイトShopeeの運営会社です。
マーケットはインドネシアの他、タイやシンガポール、マレーシアなど東南アジア全域をターゲットにしています。残念ながらこちらもシンガポール企業でインドネシア株ではありませんが、2017年に米国に上場していますので株式投資の機会はあります。
セグメント 主なサービス

セグメント利益額
2021年12月期 (百万ドル)

デジタル
エンターテイメント

・ゲーム開発/運営

+2,497
Eコマース

・オンラインショッピングサイトShopeeの運営

▲2,765
デジタルフィンテック

・デジタル決済Shopee Pay,Sea Money

▲638

 

インドネシアではShopeeとShopee payのサービスで知られていますが、これらのセグメントは、まだまだ赤字です。
私は知らなかったのですが、黒字化しているセグメントはエンタメ(ゲーム)でフリーファイアというスマホ向けゲームがヒットしているようです。(PUBG、荒野行動系のゲーム)
売上は特にShopeeが堅調に伸びていることで、急激に増加しています。ただし、直近四半期ではやや成長率が鈍化していること、またプロモーション費用等が多額にかかっており、全体としてはまだまだ赤字体質のままであることに要注意です。
 
株価の推移を見てみましょう。
一時は380米ドルまで高騰していた株価ですが、赤字から脱却できていないことが嫌われたのか大暴落し、現在は62米ドルとなってしまいました。
 
しかしながら、これだけ株価が暴落しているにもかかわらず、PBR6.5倍
まだまだ高水準と言わざるを得ません。
Shopeeの成長性を見込んでの株価形成であると思いますが、冷静に考えればまだまだ赤字のセグメントですし期待が先行しすぎていると思います。
 
唯一黒字化しているエンタメ(ゲーム)セグメントも、徐々に売上/利益は減少傾向にあり次のヒット作が出てこないと、さらなる大暴落を誘発する可能性もあります。ここはひとまず様子見がよさそうです。

分散投資が投資の鉄則!

これらの銘柄のどれが業界のリーディングカンパニーになるのか予想するのは確かに楽しいですが、ベンチャーキャピタルのような先見の明を持っていないのであるなら、株式投資の鉄則である割安の銘柄に分散投資するというのが最も効率の良い投資戦略だと日頃から考えています。

管理人
管理人
特に新興企業は株価に将来の収益期待が相当織り込まれていますので、一度悪材料が出ると株価が大きく暴落するリスクを含みます。


このような考え方から、まずGRABは大本命の銘柄だと思います。

さっそく、インドネシア株でないものを選んでしまってごめんなさい。


米ドル建てで為替リスクを分散できるとともに、インドネシア以外の市場でも先行優位を保っていますので買わない手はないと思います。

GRABのライバル企業となるGOTOも株価が割安なうちに保有してリスク分散をしておくとともに、余裕があればBUKAを少しだけ保有するといったポートフォリオ構成が面白そうです。