Superbankの事業概要
インドネシアのデジタルバンク、Superbank(SUPA)がついにIPOを果たします。目論見書が開示されてましたので、内容について分析したいと思います。
インドネシアでは既にデジタルバンクがいくつか上場していますが、Superbankは単なるデジタルバンクではなく巨大なテック企業として評価されています。
最大の武器はスーパーアプリ経由でのユーザ獲得
SuperbankはGrabとOVOというインドネシアのスーパーアプリとの深い統合連携を実現しており、顧客の実に64.4%がこれら2つのプラットフォーム経由で流入しています。
他のデジタルバンクは自社のアプリへいかに誘導するかが最初の障壁です。Webやオフラインイベントで多額のプロモーション費用を掛けて集客するのが通常ですが、SuperbankはGrab/OVOの既存アプリ利用顧客を無意識のうちに銀行サービスへと誘導できる導線があるのは非常に強いです。
Superbankは、その与信モデルもユニークです。
彼らの競争優位の源泉は、パートナー企業であるGrab、OVO、Singtelなどから吸い上げる、広範で多様なデータです。
このデータをAIに食わせて融資時の信用スコアリングとして利用しているようです。例えばですが以下のようなことが反映されるようです。
- Grab(交通・宅配データ)をどう使っているか?)
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どんなコンテンツを見ているか?
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通信費の支払いや毎月の消費行動は?
従来の銀行が融資申込者の財務履歴だけを見るのに対し、Superbankは現在の行動を見ているようです。
最大のリスクはスーパーアプリへの依存
当然ですが、GrabやOVOといったパートナーへの依存は、急成長の武器でもありますが、同時に致命的なリスク要因にもなり得ます。
目論見書でも、この点が主要リスクの1つとなっています。
これらのプラットフォームとの関係が悪化したり、システム利用料が高騰した場合にはSuperbankの優位性は危うくなります。
IPO価格は割安ではないが….
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公募価格
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1株あたり635ルピア
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調達総額
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2.8兆ルピア
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公開後の資本構成
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発行済株式総数の13%に相当
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PBR
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2.7倍
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PER
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361 倍
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業績が急上昇しているため、PERで評価することが難しいですが、
例えばデジタルバンクの競業他社の上場会社の株価をベンチ―マークとすると、PBR2.5倍~2.8倍程度ですので、妥当な価格かもしれません。
ただし、今年のIPO銘柄でも最大規模のIPOとなるため投資家の関心が高いです。現時点で90万件の応募があるなど募集殺到の状況ですので、応募者への割当は1%以下と相当低いことが想定されます。