ロシアのウクライナ侵略が報じられ、世界的に株式相場が弱含みしているなか、インドネシア株価総合指数(IHSG)は若干の影響を受けたものの、まだまだ史上最高値付近をうろうろしています。
インドネシア株は全体的に高値水準にありバリュー投資家にとっては追加投資しづらい環境であるともいえるのですが、セクター別にインドネシア株を見てみるとまだまだ投資チャンスが残っていそうです。
上のチャートは、インドネシア株価総合指数(IHSG)をベースにセクター別の指数を比較したものです。
チャート: IHSG(インドネシア総合株式指数)
ブルー:ファイナンスセクター
オレンジ: 建設セクター
黄色:不動産セクター
景気動向に敏感といわれるファイナンスセクターやインフラセクターはIHSGにかなり高い連動性を見せていますが、明らかに不動産セクターは弱含みしており、考え方によっては今が買い時ではないかと考えています。
不動産セクターは確かにコロナ禍で最も打撃を受けた業界の1つであり、例えば…
・現場作業者の間でクラスターが発生したことで工事中止や工事遅延
・在宅勤務が一般的となり、空室率上昇、オフィス賃料は大幅下落
・新規でのモール開発などもここ数年は動きなし
・新規での銀行調達も以前と比べると困難
といった要因があげられます。
ただ、インドネシア政府も昨今になって住宅取得時のVAT10%免除や、また地方政府による名義書換料の軽減措置などを発表しています。
インドネシア経済が堅調に回復してくれば、こららの政策も相まって住宅購入を後押しすることになりそうです。
大手不動産企業ランキング
順位 | 会社名 | 証券コード |
総資産額 |
---|---|---|---|
1位 | Lippo Karawaci | LPKR | 63,064 |
2位 | Bumi Serpong Damai | BSDE | 59,062 |
3位 | Ciputra Development | CTRA | 40,054 |
4位 | Agung Podomoro Land | APLN | 30,410 |
5位 | Pakuwon Jati | PWON | 28,675 |
インドネシア銘柄
1. PT Lippo Karawaci (LPKR)
インドネシアの大手財閥リッポーグループの中核事業ですが、いわくつきの銘柄でもありますので注意しましょう。
リッポーカラワチのやらかし案件は昔からいくらでもありますが、最近でも衝撃的だったのは2兆円を超えるような大規模開発計画のメイカルタの贈収賄事件でしょう。
建設許可を無理やり取得するためにブカシ州知事などへ多額の金銭供与を行ったことが明るみとなり、当時の社長や幹部を含め10人以上が逮捕されました。
事件発覚後も、モールや数棟のマンション開発は細々と続いているようですが、事件前は1株600ルピア近かった株価はみるみる下落し、今や130ルピア程度を低空飛行中です。
現在の株価水準はPBR 0.5倍と株価は十分割安に見えますが、直近は赤字が続いており不安定な業績です。あえてこの銘柄に投資する必要もないでしょう。
2. PT Bumi Serpong Damai (BSDE)
巨大財閥シナルマスの不動産中核企業です。
BSD CITY(約6,000ヘクタール)、Deltamas Cikarang) (約3,000ヘクタール)を中心にその他オフィスビル、モール、工業団地の開発・運営(KIIC)など幅広く手掛けています。
子会社にはプラザインドネシアを運営するPLIN、ジャカルタの不動産開発DUTIなど上場子会社も多く、また各プロジェクトには日系有名企業(伊藤忠/三菱商事等)の合弁参加も目立つのが特徴です。
シナルマス財閥とは
創業者のEka Tjipta Widjajaが一代で築き上げたインドネシア最大級の財閥。紙パルプ、金融・保険、不動産、エネルギー、通信インフラなど多業種に進出済みであり、現在は創業者の子供がそれぞれを監督しながら成長中。ホールディング会社の上場は行っていないが、各業界の中核企業は上場していることも多い。
現在の株価水準はPBR 0.64倍と割安です。
コロナの影響が大きかった2020年度でもギリギリ黒字をキープしていましたし、2021年度の収益はコロナ前の水準まで戻ってきていますので、安定的な業績も期待できる状況。大手不動産株の中では最もおすすめの銘柄です。
3. Ciputra Development (CTRA)
チプトラ財閥の中核企業。大手デベロッパーとして住宅開発を中心としつつモール、ホテル、病院運営なども行っています。
コロナ禍でも増収増益を継続していますので収益性の面では他企業よりもかなり安定感のある優良株です。
現在の株価水準はPBR 1.1倍と1.0倍以下の他銘柄と比較すると値ごろ感はイマイチありませんが、ポートフォリオの分散の観点から、少しだけ保有してみても面白いと思います。
4. Agung Podomoro Land (APLN)
アパートや住宅開発だけでなく、オフィス開発スナヤンシティーモールなどのモール・ホテル運営など幅広く活躍している企業ですが、コロナ蔓延の影響を大きく受け直近の業績は悪化しています。
チャートを見てみると、最悪なチャートに見えます。
現在の株価水準はPBR 0.33倍少し異常値ともいえるほどの安値です
不動産業界が回復してくることを見越して、長期目線で買っておくのも戦略の一つですが、あまりにチャートの形が悪いですね。買うとしても少額だけにとどめておくことをお勧めします。
5. Pakuwon Jati (PWON)
ガンダリアシティやコタカサブランカ、ブロックMプラザなどの大型モールと周辺アパートの運営を中心に、住宅開発なども手掛けている企業です。
財務諸表を確認してみますと、自己資本比率が高めで財務体質はかなり健全に見えます。
また、コロナ禍でもしっかりと黒字を確保していましたし、2021年度は売上・利益ともにしっかり回復してきました。
現在の株価水準はPBR 1.55倍となっています。
2022年の年初であれば割安感があったのですが、少し時期を逃してしまった感はあります。とはいえ600ルピア手前の抵抗ラインは厚めかもしれませんので一度垂れてくるタイミングもあるかもしれません。優良銘柄ですのでやはり多少は持っておきたい銘柄の1つです。
おすすめの銘柄はこれ!
大手不動産銘柄のなかで一番のおすすめはBSDEです。
一方で、1銘柄への集中投資を行うと、不祥事などが発生した場合に大損害を受けてしまいますので、リスク分散の意味合いも込めて、業績の安定していて長期投資向きのCTRA、PWONもポートフォリオに組み合わせてるのがおすすめです。
コメント
いつも楽しみに見ています。百切隊長と申します。
ちょうど一年前からインドネシア・マレーシア株投資を始めました。
確かに不動産株は出遅れ感ありますよね。長らく定位安定していたLPKRとPWONを所有してますが、最近動きが出始めてきたなと思っていたところです。インドネシア不動産会社の中で、両者はマイナー出資で開発を進めている案件も多く、財務諸表にInvestment としか表示されず実態を把握しにくい状況です。最初はリスク分散の観点からいいと思っていましたが、中国系不動産会社がメジャー出資している案件に巻き込まれるリスクもあり、評価しかねる所です。マイナー出資先のメジャー出資者を調べる良い方法があれば、教えていただきたいです。
コメントありがとうございます。
各プロジェクトの出資割合やその詳細情報については財務諸表での開示義務はなく、
またアニュアルレポートやアナリストレポートにも、マイナー出資のプロジェクト等については満足いく情報は収集できないと思います。
ですので、プロジェクト名から現地ニュースをググって調べ上げるのが一番の近道かもしれません。
インドネシア株はどの銘柄でも不測の事態が起こる可能性が相対的に高いと感じていますので、
やはり投資銘柄を分散させてリスク軽減を図るというのがよさそうです。
お忙しい中、ブログを書いてくださってありがとうございます。
インドネシアは島国なので特に東京の一等地のようなエリアは存在しないのでしょうか?
例えば東京駅でしたら、三菱地所が周辺の土地を保有しておりますが、三菱地所のような不動産会社がもしお分かりでしたらご教示頂きたく存じます。
お忙しいところ恐縮ですがどうぞよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
ジャカルタの一等地といえば、このあたりでしょうか。
ビジネス街:スディルマン、クニンガン、スマンギ、タムリン
高級住宅地:メンテン、ポンドックインダー、クマン
では、このあたりをガンガン攻めている優良な不動産会社があるかというと、残念ながら思い当たりません。
オフィスビルは一棟ごとに所有者が違うなど、コンセプトをもって計画的に開発することすら困難な状況です。
どう頑張っても、丸の内のような存在には成れないのではないかと思います。
一方で、コンセプトを持って開発されているニュータウン大規模開発案件がいくつかあり、
例えば、シナルマス財閥のBSD地区、政府系PT Jaya real property(JRPT)によるビンタロ開発、
チプトラグループによるプリインダー開発等があります。経済が回復してくれば一等地開発よりもこちらの方が成長しそうな気がしています。
久しぶりにブログを拝見しましたらお返事が届いておりありがとうございました。また、詳しくご説明を頂き感謝いたします。今後も、不動産株の情報をブログに書いて頂けましたらと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。