インドネシアの航空業界全体の分析はこちらの記事をご覧ください。
インドネシアには多数の航空会社があるものの、
インドネシアで上場しているのはガルーダ航空とエアアジア・インドネシアの2社だけです。
今回はこの2社を個別分析し、株式投資に値する銘柄であるかを検討してみます。
【業績回復中】ガルーダ航空の株価はIDR 380以下で買い?
ガルーダ航空の2018年度末の財政諸表を見て気になるのは、財務健全性の点です。
財務諸表はガルーダ航空のHPで確認できます。
流動性比率は36.6%と一般的な水準100%を多く下回っていますし、
自己資本比率17.5%というのは同業他社比較でも資本が脆弱です。
また、直近の業績もいまいちパッとしません。
2018年度は増収であるものの最終利益ベースでは赤字決算が続いています。
なお、2018年度決算についてはWiFIサービス将来15年分の売上を2018年に一括売上していたことが問題となり決算修正を行っています。
ポジティブ材料としては航空業界全体としては旅客者数が続伸している点ですが、
そのために最も重要な旅客機の調達に苦戦しています。
ガルーダ航空は、これまでボーイング社メインで航空機を調達していましたが、
ライオンエアの墜落事故のため、購入予約済み49機の旅客機購入を中止を決断しました。
※ロイター通信の記事はこちら参照
そのため、少なくとも2019年度の自社機材の購入による業容拡大は難しくなりました。
2020年頃までは旅客機数が伸ばせず、売上単価を伸ばそうにも、運輸省からは
一部区間の料金値下げを求められており、短期的な業績急回復のシナリオは困難でしょう。
直近の2019年2Q決算では黒字転換しているもの、年度末決算では2014年計上の繰越欠損金の期限切れのも見えてきました。
高値形成までは3年~5年程度見た方が良いかもしれません。
最後に過去のチャートと現在の株価水準からの分析ですが、
2018年12月末時点の1株あたり純資産は4.07ドル(=IDR 568)に対して、
執筆時(2019/9/17)の株価終値 IDR 490から考えるとPBVは0.86倍です。
※財務諸表が米ドル記帳ですので、レートにより多少誤差が発生します。
業績回復が直近で見込まれない中でこのPBV倍率では、正直投資銘柄としての魅力は薄いです。
チャートで見るに、IDR 380あたりが反発ライン、IDR 350あたりにもサポートラインが引けそうで
この水準は、PBV0.6倍程度と割安感もあり長期保有目的であれば買いです。
今後の動向に注目ですね。
【シェア2%】エアアジアインドネシアに未来はあるかのか?
エアアジア インドネシアは2018年度は大規模な赤字決算となり、
負債額が総資産額を上回ってしまい、いわゆる債務超過状況に陥りました。
※財務諸表はエアアジア インドネシアのHPにて公表されています。
2019年には、債務超過解消のために、どうやらデッドエクイティスワップを実施し
エアアジアグループ会社からの増資を行うことで債務超過は解消されたようです。
ガルーダ航空と同様、直近2019年2Qの決算を見る限り、
まだまだ燃料費の高騰等により営業利益の黒字化はまだ先になりそうです。
また、LCC航空業界で重要とされる指標の1つに有償座席利用率というのがあり、
一般的にLCCの損益分岐点は有償座席利用率80%以上とされています。
エアアジアインドネシアでは、2018年度あるいは直近の2019年2Qはこの指標は82%と
基準をかろうじて上回ってはいるものの、
安定的な黒字確保のためには80%後半まで指標が改善されることが重要です。
(参照データはこちらからどうぞ)
※ちなみにエアアジア本体(マレーシア)では90%近く達成しています。
しかしながら、前回の記事で記載したように、エアアジアインドネシアは国内便シェア2%であり
路線の充実度や利用可能便数では競業他社のライオンエアと差別化ができません。
代わりに独自の施策として地方路線を増やすといった方針を打ち出していますが、
そうなると効率性は削がれてしまうジレンマに陥るため、数年で安定的な黒字化は困難です。
最後に現状の株価水準を確認しましょう。
実は9月5日から、エアアジアインドネシアの株式売買は停止処分を受けています。
理由は、インドネシア証券市場が求める浮動株7.5%を確保していないためであり、
この解消のために、2019年12月に新株発行を行うとされています。
2019年2Q時点での、PBVはおよそ8倍程度と割高感があります。
さらに、将来的に新株発行を行えば株式の希薄化を招くことで株価下落のリスクもあります。
そのため、安定的な黒字化確保の筋道が見えてこない限りは投資すべきでないと思います。
個人的な投資ラインとしては、株式売買停止前の株価水準の1/3程度(IDR 80)です。
このあたりの水準まで株価が下落しなければ、投資のうまみは出てこないですね
【結論】現状では航空業界への株式投資はどれも魅力なし!
しかし、ライオンエアのIPOが実現すれば状況が変わるかも?
2019年9月現在の状況から考えると航空業界への投資は非常に割高で
将来性は高いマーケットではありますが、投資したい個別銘柄は無しとの結論になりました。
しかし、現在噂されているライオンエアのIPO実施が行われると、
投資が分散されることで他銘柄の株価水準はもう少し下がるのではないかと期待しています。