久しぶりに面白そうなIPO案件が出てきましたのでブログで紹介します
PT Arsy Buana Travelindo Tbkは、証券コード”HAJJ”で上場予定であることがアナウンスされました。
詳細はこちらから目論見書読んでみてください。
☑会社のビジネス概要
会社の主なビジネスはイスラム教徒の聖地 ”メッカ”への巡礼に特化した旅行サービスです。具体的には、渡航ビザや飛行機の手配、現地でのバス、ガイドの手配など一貫したサービスを提供しています。
旅行会社の腕の見せ所は、航空座席をブロックで確保したり、現地の質の高いホテルやバス会社と提携できるかどうかだと思いますが、この会社はIPOにて確保した代金の60%を航空券の予約代金として、残り40%をホテルの客室確保に利用するとしておりビジネス拡大の戦略としては王道の方法です。
インドネシアの人口の85%程度はイスラム教徒
経済成長とともにメッカ巡礼を行いたい中間所得層が増加することは間違いなさそうです。
メッカ巡礼はズー・ル=ヒッジャと呼ばれる特別な時期に巡礼するハッジ(大巡礼)とそれ以外の時期に巡礼するウムラ(小巡礼)の2種類があります。
特にハッジ(大巡礼)は、時期や毎年の参加人数が限定されており、現在10年以上待たなければならないなどかなり人気が高く、旅行代金も高額となります。
旅行代金の一部を前金で支払うことが一般的となっているようですが、途中で飛んでしまう悪質な旅行会社も数多く聞いており、いかに信頼できる旅行会社を選別するかどうかがイスラム教徒にとっては悩みの種となっています。HAJJは上場により顧客側からの信頼を勝ち取りたいという思惑も強いと思います。
☑直近の業績動向
新型コロナウィルス対策として、サウジアラビアはイスラム教徒の巡礼についても入国規制をかけましたので2020年、2021年の業績悪化はしょうがないです。
2022年3月に規制が緩和されたことで売上がぐっと上昇しており、この傾向は2023年度以降も続くものと思われます。
☑IPO公募価格の妥当性
IPO案件で気になるのは公募価格が割安なのかどうかという点です。
どんなに良い会社でもIPO価格が高すぎると買いが入らず初日から下落するなんてこともありますので、同業他社の株価水準と比較して高すぎないかは重要なチェックポイントです。
旅行サービス業は、現在業績が急回復している状況で安定していませんので、株価収益率(PER)ではなく、株価純資産倍率(PBR)で比較しました。
対象となるHAJJのPBRは2.2倍程度ですが、一方でベンチマークとなるのは、インドネシア最大規模でJTBとも提携関係にあるPanoramaグループ(PNOR)がPBR1.65倍、国内外のパッケージ旅行を手掛けるPT. Bayu Buana (BAYU)がPBR0.79倍となっています。
PBR比較では若干ですがHAJJのIPO価格は高いかなと思いますが、異常というわけでもありませんし、ビジネスのユニークさを考えればある程度は納得のいくIPO価格だとも感じます。一方で、株価が2倍、3倍になるような割安の案件でもないのが悩みどころです。
☑IPO投資はリスクが高いことを心得る
IPOへの応募方法手順についてはこちらを参照してください。
IPOに応募したとしても応募額全額の割当を受けるケースは極めて稀です。
また、IPO銘柄の15%くらいは初日公募割れとなること、初日は値動きも大きく予想以上に大きな心理的プレッシャーを感じることも多いです。IPO投資はリスクは比較的大きい投資となることをあらかじめ覚悟して投資しましょう。
また応募額については割当日まで資金拘束があるため資金繰りがショートしないように口座残高は余裕をもって容易しておくことが大事です。