5G通信が徐々にインドネシアでも話題に上がるようになってきました。
2021年11月現在の状況としては、ジャカルタ中心部のごくわずかなエリアのみ5Gエリアとなっており、また5G対応スマホはハイエンドモデルのみ対応となっているようです。おそらくジャカルタでの5G本格普及は2023年度ごろになりそうです。
通信キャリアの各企業も5G覇権を争い積極的な投資・戦略的合併を行っています(以前の記事をお読みください。)
今回は別の切り口である通信タワー事業の銘柄を分析してみたいと思います。
通信タワー事業のビジネスモデル
日本では歴史的に各通信キャリアが独自に通信塔などのインフラ整備を行ってきましたが、世界では通信キャリア会社と通信インフラ会社の棲み分けがされています。
特に5G電波の飛距離は、数百mから1km程度と言われており4G電波と比較しても圧倒的に短くなってきたことから、これまで以上に大量のスモールセル(小型基地局)が必要となるため、通信タワー事業はより一層有望なマーケットとなりそうです。
基本的なビジネスモデルとしては、通信塔など整備・メンテナンスを 通信インフラ会社が引き受け 、それを通信キャリア会社が一定の利用料を支払ってシェアする形となります。
通信タワー事業は高利益率が望める有望市場
順位 | 会社名 | 世界シェア |
2020年度 |
---|---|---|---|
1位 | チャイナタワー(中国) | 24.5% | 8.22 |
2位 | アメリカンタワー(米国) | 17.8% | 27.54 |
3位 | クラウンキャッスル(米国) | 11.8% | 21.25 |
世界の通信タワー事業会社のランキングと売上高当期純利益率は上記のとおりです。利益率が他の業界と比較しても非常に高いのがこの業界の特徴の1つです。
高水準の利益率を確保できるのは、1つの通信タワーに対して、複数の通信キャリア会社がリースしてくれること、またリース期間も一般的には5年超~、かつ途中キャンセル不可とされており将来の安定的な収益が約束されているためです。
インドネシアの通信タワー会社はこの4銘柄
1. PT Sarana Menara Nusantara (TOWR)
インドネシアで最大規模の通信タワー会社です。
主要株主は大手タバコ財閥のジャルムグループ(インドネシアトップの大富豪ハルトノ兄弟が所有)でありバックグラウンドもガッチリしています。
売上の構成をみると、顧客には通信キャリア大手がずらりと並んでおり、売上、利益の推移も申し分ない成長を見せています。
現在の株価水準はPBR 5.7倍、PER 17.8倍です。
2. PT Tower Bersama Infrastructure (TBIG)
TBIGの主要株主はサンディアガ・ウノ(現観光創造経済相)率いる投資会社サラトガ・インベスタマなどが名を連ねています。
顧客には通信キャリア大手がずらりと並んでおり、売上、利益の推移も堅調です。
現在の株価水準はPBR 7.5倍、PER 49.8倍です。
TBIGについては、主要株主のサラトガなどが持ち分の売却を模索しているとのニュースが2021年7月頃に噂されていました。実際に持ち分売却が実施されると更なる値崩れも想定されますので今は投資のタイミングではない気もします。
3. PT Dayamitra Telekomunikasi (MTEL)
MTEL(通称:ミトラテル)はインドネシアの最大手携帯キャリアであり国営企業のテレコムニカシの子会社です。
2021年11月にIPOが決定し、インドネシア証券取引所の歴史上2番目に大きなIPO案件となるなど注目を集めている銘柄です。
IPOにて確保した資金18超ルピアは新たな通信タワーの建設および戦略的な買収資金として利用する計画となっており、近い将来TOWRを抜いて業界最大の通信タワー会社となる可能性が高いとみられます。
売上構成が親会社のテレコムニカシにやや偏重してはいるもののテレコムニカシは最大手キャリア会社ですし、それほど気にする必要はないかもしれません。
IPO公募価格 800ルピアをベースに試算しますとPBR 1.9倍、PER 32倍程度となり他の銘柄と比較すると割安感を感じれるおすすめの銘柄だと思います。
4. PT Gihon Telekomunikasi Indonesia (GHON)
2001年創業のGHONの親会社はTBIGで50%超の株式を有しています。
上場は2018年と比較的最近です。
現在の株価水準はPBR 2.1倍、PER 15.7倍となっており、通信タワー銘柄としては値ごろ感があります。
チャートも右肩あがりに堅調に推移しているのは好材料なのですが、会社の規模が小さい&流通株式は6%弱しかありませんので、板がスカスカな状態です。
複数銘柄を保有してリスク分散を図るべし!
長期的には右肩あがりに株価が上昇することが期待できる通信タワー事業ですが、どの銘柄もバリュエーションが高めで、日々の値動きも激しい傾向にあります。
どの銘柄もビジネスモデルは一緒ですし、市場を独占できるような特殊な技術を有する企業があるわけではありません。そのため1つの銘柄に固執せず、複数の関連銘柄を長期保有目的で組み込むながら投資したほうがよさそうです。