インドネシアの大統領選を控え、皆様どのようにお過ごしでしょうか。
日本人駐在員の方々には当然ながらインドネシアでの投票権はないので、
あまり関心がない方も多いようで
「ジョコ大統領は任期中それなりに成果出してるし、再選確定でしょ!」
「事前調査だとジョコ陣営圧勝みたいよ」
といった具合でジョコ大統領再選を想定されている方が多い印象ですが、
私は今回の大統領選も一波乱ある可能性があると推測しています。
今回は2019年の大統領選が株式市場へ与える影響を考える記事です。
なお、私個人は現在インドネシアに居住し、就業をしていますが、
当然ながら日本国籍ですので選挙権はありません。
どちらかの陣営を批判したいといった政治的意図もありません。
単純に株式投資に与える影響を考える上での分析コメントとお考えください。
2019年度 インドネシア大統領選の基本情報
まずは大統領選の基本情報から抑えましょう。
投票日:2019年4月17日(木) なお、祝日扱いとなります。
大統領立候補者
1.(元首) ジョコ・ウィドド(現職大統領)
(副大統領)マアルフ・アミン(イスラム穏健派ウラマー評議会議長)
2.(元首) プラボウォ・スビアント(野党グリンドラ党党首)
(副大統領)サンディアガ・ウノ(ジャカルタ特別州元副知事)
インドネシアでは大統領制が採用されており、
元首と副大統領の2人1組のペアで立候補することとなっています。
実はジョコ氏 VS プラボウォ氏という対決構図は
前回の2014年大統領選でも同じでした。
その際は、ジョコ53% プラボウォ47%と大接戦を広げたうえ
ジョコ新大統領が誕生しました。
政策
各陣営の掲げる政策には、大局的な政策に差はないと言われています。
気になる方はジェトロに政策の概要が載っていましたので、参照ください。
今後のスケジュール
投票日の約半年前(2018年9月)に立候補者が確定した後に
投票の4カ月前から各陣営が参加する公開討論会が行われます。
公開討論会のテーマは以下の通り。
第1回 1/17 人権、テロ対策
第2回 2/17 エネルギー、環境、インフラ政策
第3回 3/17 教育、文化、医療
第4回 3/30 安全保障、グローバル化
第5回 4/13 経済、金融および投資政策
4/17 大統領選の投票日
約1カ月おきに計5回公開討論会が実施される予定です。
インドネシア語ですが、スケジュールとテーマの詳細はこちら。
事前調査結果の推移
事前調査結果については各メディアで多少の幅がありますが、
立候補者が出そろった2018年9月頃の調査では
ジョコ陣営50% vs プラボウォ陣営20%程度で推移していました。
この結果を知った多くの方が、ジョコ大統領再選を確信していたと思いますが、
現在はジョコ陣営50% vs プラボウォ陣営35%と15%まで差が縮まっています。
私はプラボウォ陣営がこれからも支持率を伸ばし、
2014年の大統領選挙のように接戦となる可能性があると思っています。
トランプ大統領の誕生も、ほとんどの日本人があり得ないと思っていましたが
米国民の世論はトランプ氏を選んだように、
ひょっとしたらプラボウォ陣営が猛烈な追い上げを見せ逆転する可能性を
考慮しておくべきだと思います。
プラボウォ陣営が追い上げている3つの理由
①ネットを使った情報戦に長けている
プラボウォ陣営の最大の特徴はネットを使ったイメージ戦略です。
”ジョコ大統領は非ムスリムで華僑の血が流れている”
”インドネシア政府は中国に裏で操られている”
といった真偽不明なネガティブキャンペーンと
ナショナリズムを煽るようなメッセージを組み合わせ
WAやTwitter、Facebookを使って拡散しています。
実際、私は何人かのインドネシア人の友人から、
この類の話を真剣に聞かされた経験があります。
このような情報戦のターゲットの1つは教育レベルの低い有権者層です。
インドネシアでは大雑把に言えば小卒25%・中卒25%・高卒25%・大卒25%
といった分布だったと思いますので、
十分な教育を受けていない有権者層=国民の半分超
と考えると影響は大きいと思います。
特に経済的恩恵を実感していない貧困層を中心に現政権への不満は大きく、
愛国心や正義感を煽るメッセージは強烈なインパクトを与えています。
また、公開討論の際に個人的に気になったのは両陣営の絵面です。
みなさんはどんな印象を受けますか?
ジョコ陣営は副大統領候補に75歳のイスラムの重鎮を選んだことで
イスラム層に配慮した半面、保守的で年功序列的な印象を受けます。
一方、プラボウォ陣営はこれまでの政治家としての能力や経験はともかく
ルックスの良いサンディアガを選択し若々しく、革新的な印象から
女性層に人気が出そうな人選となりました。
③最後は結局”金”!どれだけ資金調達できるか?
インドネシア人が投票する際に参考にする情報の圧倒的1位は
圧倒的1位がイスラム指導者の意見と言われています。
インドネシアではイスラム指導者の意見は、
各陣営の公約やテレビのコメンテーターの発言よりも大きな影響力があります。
特に、ムスリム教徒は週に1回集団礼拝を行っており、
イスラム指導者の説法を聞く機会がありますが
このような状況で
イスラム指導者が特定の陣営によって買収され
特定の陣営への投票を促したらどうでしょうか?
2014年の大統領選挙では選挙終盤に支持率差が急速に縮まりましたが
その際に、特定の陣営から多額の資金がイスラム指導者へ流れたという
メディアでの指摘もありました。
今回も選挙終盤にこのような動きがあるかもしれません。
なお、現時点ではプラボウォ陣営が資金調達に苦心しているとの報道もあります。
しかし、選挙終盤にかけてこのような事態が起こることも想定され、
その場合、今回の選挙戦に一波乱が起こるかもしれません。
今後の株式市場はどう動くか?
このような状況から、私は両陣営の支持率差は徐々に縮まっていき、
最終的に前回のような混戦となった場合には、
少なからず株式市場も弱含みの相場になるのではないかと考えます
特に残りの公開討論直後と投票日前1カ月間の株式市場の動向には注意が必要です
またエネルギー、インフラといった業種は、
政治政策を受けやすい銘柄の筆頭です。
公開討論会での発言内容によっては株価が乱高下することが想定されます。
これらの想定を踏まえ、すでに投資していいるエネルギー株銘柄は
2/17日の第2回公開討論前に利確しようと思います。
その後、株価が下落していけば底値を広いながら買い戻していきたいと思っています。