過熱するインドネシアの電動バイク市場

人口2億7千万人のインドネシアは年間のバイク販売台数は年間500万台程の巨大マーケットです。これまで日系バイクメーカーが独占していたバイク市場に、ここ数年でインドネシアの電動バイクのメーカーもどんどん参入しています。2023年5月迄に電動バイクの販売台数は累計4万8000台を達成したとも伝えられています。

管理人
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確かにジャカルタでも電動バイクを見かけることが多くなりました。

 

鵜呑みにはできませんが、2025年に生産台数200万台を目指すとジョコウィ大統領は意気込んでおり、今後も電動バイクが伸びていくのは間違いなさそうです。ただし、電動バイク市場は参入が容易であり、小規模なメーカーまで含めると既に50社以上あるとも言われています。

 

管理人
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どこが勝ち残るのか読み切って投資していきたいですね。

電動バイクの人気調査結果

各メーカーの製品を確認する前に、インドネシアのニュースサイトで電動バイクの人気調査結果が紹介されていましたので紹介したいと思います。

この調査結果から見えてくることは、

上位5位は支持が均衡している。突出して人気のメーカーは未だ出てきていない。

・上位5メーカー以外は支持率がかなり低い。消費者の選択肢にすら入っておらず淘汰されていく可能性が高い

・消費者は価格にシビア、 約10百万ルピア以下で買えるバイクが人気の中心

管理人
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日系バイクメーカーの将来が心配です。


1.Gesits【投資候補:GOTO/TOBA/WIKA】

まずは日本人に最も知られているメーカから紹介したいと思います。

Gesitsはインドネシア国産メーカーとして人気のメーカーです。製造元はPT WIKA Industri Manufaktur、主要株主はIBC(国営EVバッテリーの持ち株会社)と国営Wijaya Karya(WIKA)となっており、インドネシア国産電動バイクと考えていいと思います。

特徴としては走行距離最大100km、バッテリーは交換可能(自宅充電も可能)で、かつ国営プルタミナなど超大手企業との連携により街中の充電スタンドの設置などのインフラ面でリードしているようです。

ただし、販売価格は30百万ルピアとやや高めです。低所得者向けの補助金最大7百万ルピアが出てもまだ高いと感じる一般庶民も多いと思います。

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ライトユーザーよりは配送ドライバーなどのヘビーユーザーを狙っているように見えます。

このGesitを販売しているのはElectrum(エレクトラム)です。

こちらはGOTO(配車アプリGojekの)と、石炭採掘大手のPT TBS Energi Utama(TOBA)の合弁会社です。

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TOBAは大物政治家のルフット大臣がオーナー(と言われている)です。
ジョコウィ大統領が、電動バイクを国家事業として何としても成功させたい理由も何となく分かる気がします。

2.Gogoro

エレクトラムは、数年前までは台湾電動メーカーのGororoの販売に力を入れていました。

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スクーピーのようなかわいい車体が特徴

バッテリーは交換式で、Gojekドライバーへのレンタル車体としてジャカルタでは以前よく目にしました。
現在でも販売は行われているようですが、販売価格は最安でも36百万ルピア~と別メーカーと比較して強気の値段設定であること、また国内調達率が低く今回の政府補助金の対象車には含まれなかったことで、今後販売台数を伸ばすのはかなり難しいのではないかと予想します。

3.Selis【 投資候補: SLIS】

2011年創業、インドネシアでは電動二輪のパイオニアメーカーPT Gaya Abadi Sempurnaの主力製品がSelisです。

2019年に親会社が上場しています。(証券コードSLIS)

上場してすぐは期待先行で一時株価が上場時の100倍近く急上昇した銘柄ですが、その後大暴落して今現在は株価はかなり落ち着いています。

Selisで注目すべきは、エントリータイプのE-MAXとAGATSでしょう。

これらの販売価格は15百万ルピア~20百万ルピア程度、さらに低所得者向けに政府補助金 7百万ルピアも決定しており、既存のエンジンバイクよりさらに安く買える価格帯となっています。

管理人
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Youtubeなどで製品紹介動画を見ましたが、チープ感は否めません….。でもこれだけお安いと思わず買ってみたくなりますね

ただし、2022年までは売上がほぼ横ばいで苦しい業績、過剰と思えるほどの在庫や売掛金の滞留も気になります。2023年1Qから売上は上向きに推移しているのはポジティブ材料ですが、投資の本命にはならなさそうです。

4.Volta【 投資候補: MCSH/NFCX】

バッテリー交換式の電動バイクです。ガソリンバイクの110ccくらいの車体の大きさ、最大速度も60km/時、最長飛距離180kmですので他の格安メーカーよりはある程度スペックを確保しているようです。

販売元のPT はIT開発のPT NFC INDONESIA(NFCX)とSiCepat(配送サービス会社)の合弁企業です。

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NFCXの親会社はPT M Cash Integrasi (MCAS)です。


こちらの陣営には国営電力会社PLN国営通信企業Telkomselとも業務提携を結んでおり、街中にバッテリー交換所を270か所開設していると報道されています。

最大の魅力は、本体価格は16.9百万ルピア、補助金7百万ルピアを差し引くと10百万ルピア以下で新車が買えるという攻めた価格設定が話題を呼んでいます。

NFCXは二番底をつけたような面白いチャートをしているものの、PBR 5倍越えの高PBR株です。万が一暴落すると大損する可能性もあるので私は手を出しにくいです。

5.Alva【 投資候補: INDY】

製造・販売はPT Electra Distribusi Indonesiaは 石炭大手のPT Indika Energy tbk(INDY)の子会社です。

ちなみにINDYのオーナーであるAgus Lasmono はスハルト大統領の甥です。


ここまで人気の電動バイクは、補助金対象で10百万ルピア以下ばかりでしたが、このメーカーは36Jutaと高価格帯、大型バイクに近い大きさと車体の丈夫さが売りのようです。

SCBDに立派なショールームも出しており、かなりプロモーションにもお金をかけている印象です。

INDYの業績の大半が石炭の鉱山採掘ですので、電動バイク銘柄として買うことはできませんが、中長期保有を前提に株を買いにいくのはアリかもしれません。

6. U-WINFLY

中国系電動バイクメーカーで、補助金無しで4百万ルピア~でECサイトで販売されており今話題になっているメーカーです。


3百万ルピア代の次世代電動バイクのプレオーダーも開始していました。製造コストどうなってるんでしょうか。


圧倒的な価格設定は非常に魅力的で、中国本土で溢れかえっている格安小型電動バイクのビジネスモデルを考えているのだと思われます。但しオーナーや製造元も含めて謎が多く、投資するにもどこの株を買っていいのか正直わかりません。

また、1回あたりの走行距離は40km程度で都心部でのチョイ乗りとしては問題ないですが、地方都市や長距離通勤用としては利用が制限されぞうです。またインドネシア政府の後ろ盾無しのようですので、自社だけでインドネシア全土に展開できるか という点も考えると、ブームは一過性で終わってしまう可能性もありそうです。

番外編 – Yadea【 投資候補: IMAS】

世界で最も売れている中国メーカーYadeaが2023年にインドネシアに上陸しました。現状では2種類の電動バイクを投入しており、どちらも価格は20百万ルピア~となっています。

輸入販売を請け負うのはサリム財閥のPT INDOMOBIL SUKSES INTERNASIONAL(IMAS)であり、ビッグプレイヤー同士の連携は業界の注目の的となっています。今後の売れ行きに注目です!

電動バイクの市場は本当に儲かるのか?

電動バイク市場がこれから右肩あがりとなることは間違いなさそうです。

しかしあまりに競争が激しく、本当に電動バイクメーカーが儲かるのかかなり疑問です。特にインドネシアでは低価格の電動バイクが主流になりそうですので製造・販売を担う企業は差別化も難しく、薄利多売のビジネスモデルとなりそうです。

大抵、このような市場では、小売よりも周りのバッテリーメーカーや充電拠点、メンテナンスなど別の産業のほうが利益を確保しやすい可能性があります。

管理人
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次回は、周辺産業のメインプレイヤーを調査してみたいと思います。